自己言及型

2023年10月 9日 (月)

自己言及型の事象

今回は、現象や方法などを表す英語のうち、自己言及型になっているものを取り上げます。なお、RAS syndromeは再登場ですが内容を一部更新しています。

<事象編>
Hobson-Jobson ホブソン・ジョブソン
 外国語の単語や成句に、自国語による発音と綴りを当てはめて取り入れること。同名のAnglo-Indian語彙集が1886年に出版されており、Hobson-Jobson自体がアラビア語の "Yā Ḥasan! Yā Ḥosain!"(儀式中に繰り返される叫び)を英語化したものとなっています。例としては、cucaracha(スペイン語)→ cockroach(英語)。まさか、あの陽気な ♪「ラ・クカラーチャ」が「G」の歌だったとは!

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得意芸は「ヤホー漫才」

Martingale betting strategy マルチンゲール戦略
 負け続ける限り、賭け金を2倍にしていく方法(18世紀の仏で流行)で、勝つ確率が50%の公平なゲームにおける必勝法と思われがちですが、実は賭けの前と後で所持金の期待値は数学的に同じになります。つまり、この戦略は「過去の情報に制限して計算した期待値と未来の期待値が同一になる」という確率過程の性質 「martingale」を有しています。固有名詞的な戦略名(由来は不明)から一般的な数学用語が作られた点がおもしろいです。

RAS (Redundant Acronym Syndrome) syndrome 冗長頭字語症候群
 2001年造語。JIS standardsやGPS systemのように、頭字語(acronym)や頭文字語(initialism)の一部が重複してしまっている表現(tautologyの一種)のことで、この単語自身が「RAS syndrome」の症例になっています。RV車、ATM機、SI単位系のように、外国語の文字と日本語の文字が混在すると、この現象がさらに起こりやすくなるようです。

Stigler's law スティグラーの法則
「科学的発見に第一発見者の名前が付くことはない」という法則(1980年提唱)。スティグラー自身が、この法則の発見者はR. Merton(社会学者)であるとして、この法則自体も「スティグラーの法則」を満たしていると述べています。例として、ハレー彗星(1759年命名。紀元前240年、司馬遷の『史記』に記載あり) やピタゴラスの定理(ピタゴラス以前に古代バビロニアで既知)が挙げられていますが、後者は、
1972年に提唱された「数学の公式や定理には通常、本来の発見者の名前が付かない」というボイヤーの法則(Boyer's law)の例とするのが適切かもしれません。

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2023年10月 2日 (月)

クセ強な英単語

単語の「音」自体に意味があるとする「音象徴」の考え方は、古代ギリシアのソクラテスの時代からあるそうで言語学の重要なテーマにもなっているようです。今回は、音を筆頭に様々な手法で自己主張してくるクセ強な英単語をいくつか取り上げたいと思います。

<単語編>
gobbledygook(gobbledegook) 難解な/意味不明な/無意味な言葉・表現、テキストの文字化け
 1944年の造語。まず見た目が「文字化け」っぽいし、
5つの阻害音(k, p, t, k, k)→4つの濁音減価(g, b, d, g)でネガティブすぎる響き。本家の「all Greek」も顔負けのインパクトです。例えば、手品をするときの呪文=abracadabra(アブラカダブラ)や魔法の歌 Bibbidi-Bobbidi-Boo(ビビデバビデブー)などにも共通するこの濁音連続攻撃は、聞き手や読み手に良くも悪くも明らかに普通ではないイメージを与えます。

mondegreen 聞き間違い
 1954年の造語。この単語自体が“laid him on the green ()”→“Lady Mondegreen (×)”の「聞き間違い」。本ブログでは15年ぶりの再登場ですが、当時の記事で引用したWikiの疑問は既に解消されていて、(広義の)空耳はdeliberate mondegreenという扱いに訂正されていました(ホッ)。個人的には「空耳」の意味が国語辞典で ①幻聴、転じて聞き違い、②聞こえないふり、となるのはいつ頃なのか気になっています。

oxymoron 撞着語法(矛盾語法)Photo_20231002230001
 本ブログではおなじみ。ギリシア語の鋭さ(oxy)+鈍さ(moron)に由来し、この単語自身が矛盾をはらんだ「撞着語」。ちなみに(鋭い味がする)酸はギリシア語でoxys→「酸の元が酸素である」という誤解から生まれたoxygen→それを和訳した「酸素」→それを輸入した中国と韓国→中国だけがかろうじて「氧」に変更。このように「新語の広がりは急激で、その回収は緩慢な」言語の性質こそoxymoronicだといえるかもしれません!

semordnilap シモードニラップ 
 逆方向から読むと違う意味になる語句のこと。この単語を逆から読むとpalindrome(s)=回文という別の意味になるので、この単語自体が「シモードニラップ」。回文を作るときのパーツとしても重要かもしれません。有名な例として、stressed(ストレスのかかった)⇔ desserts(デザート)があり、ストレス解消はデザートで!と考えるとちょっとオシャレなペアですね。

次回は自己言及型の事象編を取り上げます。 

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2008年11月15日 (土)

名は体を表す

単語がもつ意味や構造を、その単語自体が表している例を集めてみました。

mondegreen 聞き間違い(空耳アワーの空耳はこれですね) 
 この単語自体が“laid him on the green”→“Lady Mondegreen”の「聞き間違い」。なお、Wikiに次のような説明があります。
 A mondegreen is the mishearing or misinterpretation of a phrase, typically a standardized phrase such as a line in a poem or lyric in a song, due to near homophony. It should not be confused with Soramimis, which are songs that produce different meanings to those originally intended, when interpretated in another language.

「聞き違いと空耳を混同しないように」まではよいのですが、その空耳の説明(下線部)がなぜか完全に「空耳アワーの空耳」になってしまっています。空耳の定義は「実際にはない音声が聞こえたように思うこと」のはずですが・・・。

oxymoron 撞着語(法)
 oxy+moron=ギリシア語の「鋭さ+鈍さ」に由来し、この単語自体が「撞着語」。少し前に流行った「鈍感力」も撞着語の響きを感じます。そういえば、「撞着」とほぼ同義の「矛盾」も故事成語の意味を端的に言い表していますね。

reduplication 反復(語)
 re-(繰り返す/強意)+duplication(重複)で、この単語自体が「反復語」。一般に、単純な音の繰り返しを含む語を指します。[例: hush-hush 秘密(の)/vt. もみ消す、goody-goody 殊勝げな] 音節数の同じ場合の頭脚両韻型もこれに含めてもよいかもしれません。
関連語にはtautology(類語反復)pleonasm(冗語)があります。以上をまとめて言い表すとしたら、クリスさん(実ビジ)が解説でよく使うredundantの名詞形redundancyが一般的でしょうか。おっと、このredundancyはリダンダンスィでダンの発音が「重複」してます。ともあれ、反復表現は実ビジの十八番、語彙習得にはもってこいの逸材です。詳細はそのうち記事にまとめてみたいと思います。

RAS syndrome(=Redundant Acronym Syndrome syndrome)
 HIV virus、ATM machine、LAN networkなどのように、頭文字語あるいは頭字語の一部が重複してしまっている表現で、この単語自体が「RAS syndrome」。tautologyの一種。

I before E, except after C, and “weird” is just weird.
 Cの後を除いてIはEの前、そしてweirdはやっぱり変。

 前半はスペリングの規則を覚える有名な呪文(mnemonic rhyme)ですが、このextended型として weirdのスペルは単語自身の意味の通り例外(ei)だという意味です。

discord n. 不協和音,vi. 一致しない
 接頭辞「dis-」は一般的に強勢が置かれないですが、このdiscord は「dis-」にアクセントがあります。このため、通例と一致せず、単語全体の発音が何となく不協和音的に響く単語です。なお、動詞の場合は強勢が後にずれること(discórd)もあるようです。

逆に、名が体を表していない単語やフレーズはこちらをどうぞ。

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