語源

2009年5月 1日 (金)

Swine Flu

メキシコ発の新型インフルエンザのエピデミック化が深刻な問題となっています。日本でも大型連休の折、経済的な影響がいっそう懸念されます。不況に続いて世界情勢は混沌の一途を辿っているかのようですが、こういう時ほど冷静さが必要ですね。最近の英語ニュースをチェックしてみました。

New cases of swine flu were confirmed in the United States and Europe a day after the WHO said the virus threatened to become a global epidemic and raised its alert level to Phase 5, the second-highest stage, for the first time.

欧米でも新型のブタインフルエンザが確認された。その前日、WHO(世界保健機関)はウイルスが全世界的に広がる恐れがあるとして、その警戒レベルを上から2番目の段階、フェーズ5に初めて引き上げていた。

swine ブタ *動物学・医学などで使うフォーマルな単語
 cf. bovine(ウシ)、ovine(ヒツジ)、equine(ウマ)
  ↑これらは全て第一音節に強勢、語尾は-ine [ain]。

epidemic 伝染病・流行(の) 
 語形成はepi(=upon)+dem(people)+ic で「人々の上」に広がるイメージ。demはdemocracy(民主主義)にも入っています。記事ではglobal epidemicとありますが、これを一語で言うと次に紹介するpandemicです。

pandemic 世界的流行病(の)・パンデミック
 語形成はpan(=all)+dem(people)+icで、「全ての人々」に広がるイメージ。pan-はpanacea(万能薬)、Pan Pacific(環太平洋)、あるいはPangea(パンゲア)のpanですね。
 深刻さの度合: pandemic=global epidemic>epidemic

alert ①警戒(警報/体勢)(の) ②機敏な、冴えて
 alert level=警戒レベル。on the alert (警戒体勢で)という形でよく見かけます。最近の実ビジでは②の意味で出てきました(4/29)。いずれの意味も、状況に対していつでも俊敏に対応できる体勢、体調にあるということで共通しています。

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2007年11月26日 (月)

アンビ

10月号のビジ英(p.36,下から5行目)でambidextrous という見慣れない単語が出てきました。dextrous(器用な)も知らなかったので意味がとれませんでした。接頭辞「ambi」はラテン語由来で「両方に・で/周りに・で」という意味があります。ということで、今回はambi-で始まる単語をまとめてみました。

ambient まわりの ex. ambient temperature 室温
ambidextrous 両利きの/とても器用な/ずるい
 
n. ambidexterity 両手利き/器用さ/不誠実 
 
n. ambidexter 両手利きの人/不誠実な人 
ambiguous あいまいな(<あちこち動かす)
 n. ambiguity あいまいさ
ambisextrous 両性愛の/(服装などが)男女両用の
ambisexual 両性愛の(人)/雌雄同体(の)
ambit 境界・範囲
ambitious 野心のある (<政治家になるため、あちこち票を集めに行く)
 n. ambition 野心
ambivalent 相反する感情を持った
 
ex. be/feel ambivalent about ~について態度を決めかねている
 n. ambivalence 相反する感情・迷い

その他、語源的に関係があるかどうかわからないのですが、ámbush=待ち伏せ(て襲う)は、ターゲットをまわりの(amb(i))茂み(bush)で待ち伏せするイメージで覚えることにします。中東関連の国際ニュースで時々出てくる単語です。

さて、

一昨日、我が家の昼食は「笑点」で有名な「木久蔵ラーメン」でした(いただきもの)。醤油ベースの和風の味付けがあっさりとしていておいしかったです。東京タワーのお土産としても売っているそうですが、これからの時期、受験生に売れるのでは?と思いました。木久蔵さんの大喜利にはオチがない(落ちない)から。(このネタ、既に使われていそうですが・・・)

「ラーメン」と「受験生」から思い出したのですが、確か「英単語連想記憶術」という受験本に「ラーメン食べる(lamentable)悲しい受験生」という実に見事な一句がありました。ただし、laméntableのアクセントは第2音節で、ラーメンの正しいつづりはramenですね。

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2007年11月23日 (金)

イズム

ism」はもともと、①学説、主義、傾向などを示す接尾辞ですが、とくに1960年以降は②差別・ひいきといった意味で使われることも多くなったようです(昔のビジ英より)。これらのうち、最近気になった単語をまとめてみました。

学説・主義・傾向
Darwinism ダーウィン説(ビジ英10月号,p.75中ほど)
 いわゆるダーウィンの進化論(Darwin's theory of evolution)ですが、最近では一般化して、発展や淘汰のしくみを指して、日本語でも「経済/社会/言語のダーウィニズム」と言ったりするようです。
environmentalism 環境保護主義/環境決定論(ものしり英語塾11/19,20)
 「環境保護主義」は今や一般常識として国際的にかなり浸透し、環境保護団体 Greenpeace の活動などにも象徴される考え方ですね。一方、心理学の分野では、人格形成が遺伝よりも環境が支配的であるとする「環境決定論」という意味もあるそうです。似た意味で「Nurture is above nature.(育ちは遺伝より大切である)」という格言もありました。
absenteeism 計画的欠勤・サボリ癖
 これも現代病の1つでしょうか。ちなみに本ブログの勘違い英会話のトムもちょっとこの傾向があるのかもしれません。これとは対照的に、presenteeism(欠勤すると失業するかもしれないという恐れなどから正当な欠勤理由があっても出勤してしまう状況または感情)という単語もあるそうです(ビジ英2月号,p.27)。

 その他、vandalism(故意の破壊行為)などもありました。この単語はヴァンダレイ・シウバ(格闘家)からの連想で覚えました。

差別・ひいき
 この用法は、racism人種差別,1933年)の概念がきっかけなのだそうです。以下、( )内はその語が作られた年を示します。
ageism 年齢による差別(1969)
chauvinism 極端な排他主義/性差別主義
 ex. male chauvinism 男性至上主義
lookism 容姿による差別(1978)
nepotism 縁故者びいき
sexism 性差別(1968)

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2007年11月13日 (火)

spire

-spire 系の動詞
 前回の記事の会話中に出てきた形容詞respiratory(呼吸器の)の元の動詞はrespire ですが、これは語源的に、re(regularly)とspire(breathe)から成り立っているそうです。今回は-spire 系の動詞をまとめてみました。全て-spíre にアクセントがあります。

aspire 切望する<a (=to) ~へ熱い息を吐きつける
conspire 共謀する<con (=together) 呼吸を合わせる
expire 期限が切れる/息を引き取る<ex (=out) 最後の一息を吐く
 cf. expiration date 有効期限・賞味期限
inspire 奮い立たせる/示唆する<in 息を吹き込む
perspire 汗をかく<per (=through) (皮膚を)通して呼吸する
transpire 明るみに出る/排出する<trans(=across) 向こう側に息を吐く

 aspire の語源はちょっとイメージしにくいのですが、日本語だと「熱い視線を送る」のような感じでしょうか。また、inspireperspire のそれぞれの名詞形はT. Edison の有名な次の言葉の中で脚韻を踏んで使われていますね。

“Genius is 1% inspiration and 99% perspiration.”
「天才とは1%のひらめきと99%の努力である」  

 perspire はなぜかこの文でしか出合ったことがありません。「汗をかく」は自動詞のsweatget sweaty あたりで十分かもしれません。perspire はsweat よりも上品な語という記述もありました(Eゲイト英和)。

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2007年11月12日 (月)

羅列型(病気編)

ビジ英の中ではときどき羅列(listing)型の台詞まわしが見られます。2006年1月のビジ英のビニェット中では、traveler's diarrhea(旅行者下痢症)についてのこんな会話がありました。

A: It can set off nausea, fever and stomach cramps.
H: You're also at high risk for common colds, skin rashes, influenza and respiratory infections.
(2006年1月号p.62, Alvarez&Heinrichs)

A: それ(旅行者下痢症)は吐き気発熱胃けいれんを引き起こす可能性があります。
H: それに風邪皮膚炎インフルエンザ呼吸器感染症にかかるリスクも高いですね。

「~症」を表す「~ia」
 なぜか病気(系)を表す単語はaで終わるものが多い気がします。例えば、上述のnausea(吐き気)やasthma(ぜんそく)など。とくに、-iaで終わるものは「~症」と訳されているものが多く、通常その語尾にアクセントは置かれないようです。
amnésia 記憶喪失/健忘症 
anémia 貧血(症)
hérnia ヘルニア 
insómnia 不眠症
pneumónia 肺炎 

器官の「~炎」を表す「~itis」 
 
この接尾辞「itis[ra'itэs]」の原義はinflammation(炎症)であり、その最初の「i」にアクセントが置かれる傾向があります。
arthritis 関節炎arthro(=関節)+ itis
gastritis 胃炎gastro(=胃)+ itis 
neuritis 神経炎<neuro(=神経)+ itis 

 また、「-itis」を語尾につけて、おどけて「異常な状態・状況」「~魔・狂」を示す複合語を作ることができるようです。他に「~魔・狂」を表す単語としては、bufffreak がありました。
baseballitis 野球狂
telephonitis 電話魔

最後に、上の会話中に出てきたrespiratory の元の動詞はrespire ですが、-spire 系の動詞についてはまたの機会に・・・。

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2007年11月 9日 (金)

dis

接頭辞「dis」は、品詞に関わらず強アクセントは置かれない傾向があるようです。

例外: díscordn. 不協和音)
    discount(割引)→①と③の両方のパターンあり

 このブログによくお立ち寄りの方はお気づきかと思いますが、英単語に対する私のスタンスは「音」と「語源」が両軸です。「音」に関しては、ブログ中でも RhymePUNアクセントの法則 などに反映されています。「語源」に関しては、ブログの語源シリーズ以外にも「語源マトリックス」というものを作成中です。それによると、dis で始まる動詞には次の2つのパターンがあります。

分解系のdis(=apart, away)
 例:disrupt(ビリビリに破る→分裂させる)
   discharge(責務を粉々にしてなくす→責務を果たす)
   discuss(バラバラに砕く→討論する)
否定のdis(=not)
 例:disagree(一致しない、不賛成である)
   disclose(閉じ込めない→暴露する)

 「語源マトリックス」はいずれ何らかの形で皆さんに公開したいと考えています。

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2007年10月24日 (水)

プリケア?

先週のプリキュア=Precure(Pretty Cureの略)は「パルミエ王国の王子・ココがメタボで大ピンチ」という愉快な話でしたが、このプリキュアに似た音の「plicare」はラテン語で「重ねる(fold)」という意味があり、ここから派生した「-plicate」を語幹とする動詞が結構あります。接頭辞(prefix)をつけると意味が展開します。一番ピンとくるのは、complicate あたりでしょうか。

complicate 複雑な/複雑にする
explicate 詳説する/展開する
 
*重なっているものを外に広げる(= unfold)
implicate 巻き込む(しばしば受身で)
replicate (折り返して)重ねた/重ねる
 
*réplica(レプリカ/生き写し)も同じ語源。
supplicate 嘆願する
 
*sup(p)=sub、下に(ひざまずいて)(手を重ねて)祈る

複写系 以下、全てにn, adj, vt があります。
dúplicate 副本(控え)(を作る)/二重にする/vi 二重になる
tríplicate 3通(正1、副2)(を作る)/三重にする
quadrúplicate 4通(正1、副3)(を作る)/四重にする
quintúplicate 5通(正1、副4)(を作る)/五重にする

これらのうち、duplicate は時々見かけますし、 quadruplicate は論文の投稿規定中の指示に出てきて、実際に4部の原稿を提出した記憶があります。

最後に、prefix なしのplicate [pláikeit]単独の形容詞がありました。発音にちょっと注意ですね。

plicate ひだのある
 plicate ひだのある
plicate ひだのある
 plicate ひだのある
plicate ひだのある
 plicate ひだのある
plicate ひだのある
 plicate ひだのある
plicate ひだのある
 plicate ひだのある
plicate ひだのある
 plicate ひだのある

ひだひだ感を表してみましたが、いかがでしょうか(笑)

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2007年8月 1日 (水)

evidence

昔のビジ英(97年12月号p.120)で、新CEOを評してこんな文がでてきていました。
 If he has a sence of humor, it's not evident.
 彼にユーモアを解する心があったとしても、歴然としません。

evidence の「証拠」のイメージが強すぎて、このevident がいまいちピンときませんでした。evidence は「証拠・物証/形跡」という意味の名詞で、語源はラテン語の「外に見えているもの」。一方、evident は「(証拠があって外から見ても)明らかな」という意味の形容詞。つまり、上述の文は「彼にユーモアを解する心があったとしても、それが言葉や態度として表に出てくるのを実際に確認していないのでわからない」といったニュアンスですね。私の場合、evidentevidence については、語源は同じでも少し分けて考えたいと思います。ちなみに、evidence の形容詞形は evidential 「証拠の・証拠となる」だそうです。これですっきりしました。
以下に、evidence 関連の表現をまとめてみました。

anecdotal evidence (個人の体験事実に基づく)事例証拠
circumstancial evidence 状況証拠
counter-evidence 反証
cumulative evidence 重複証拠
growing evidence 次々と上がる証拠There is growing evidence ~)
hearsay evidence 伝聞証拠
in evidence 見られて/証拠として
negative evidence (反対のことが存在しないという)否定的証拠・反証
on evidence 証拠があって
scientific evidence 科学的証拠
state's evidence (米)共犯証言(者)、国側の証言(者)
statistical evidence 統計学的証拠

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2007年7月 5日 (木)

piglet

馬越先生の3ヶ月の講座が終了し、小林先生の「くまのプーさん」の講座が始まりました。
初回、早速気になった単語は、こぶたの piglet です。動物や鳥を表す単語に-let がつくとその子供を表すと習ったことがあります。2代目のプリキュアの1人はキュアイーグレット(Cure Eaglet)で「子わし」でした。ちなみに、フェレット(白いたち)のspelling はferret (←探偵の意味も)でこちらは関係がありませんでした。
ここで、let が最後につく単語を簡単に集めてみました。これらの単語群は、ラジ子さんのブログより、①小~、②(身につける)~飾り、に大別されるとのことです。

①小~
bookletpamphlet) パンフレット、小冊子
boomlet 小景気・ちょっとしたブーム
 cf. baby boomlet 親がベビーブーム世代の子供達
bullet 弾丸/中黒・中点
hamlet 小村・村落
inlet 入り江・小海峡
islet 小島
leaflet ちらし・折り込み
owlet フクロウの子
tablet (薬の)錠剤
wallet 財布(札入れ)
yogulet 「ヨーグレット」(yogurt+let)←あくまで予想です(笑)

②(身につける)~飾り
amulet お守り・魔除け
anklet アンクレット・足首の飾り
bracelet 腕輪・ブレスレット
circlet 小円・小環/指輪・首輪・腕輪

①の最後、長寿商品のお菓子「ヨーグレット」(明治製菓)は、もしかしたらヨーグルトに接尾語letをつけて命名されたのかもしれないということで。あるいは単にタブレット(tablet)の形をしているから、ということかもしれません。いずれにしても-letがらみということで。「ヨーグレット」は「ハイレモン」とともに、子供の頃、よく遠足のお菓子に買って持っていったことを思い出しました(That takes me back.)。

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2007年6月23日 (土)

cucumber

キュウリ=cucumber は、ラテン語の「cucuma(壷形の容器)」が語源とされています。学名は Cucumis sativus(Cucumis=キュウリ属、sativus=栽培された)。

日本語の漢字では胡瓜(胡=中国の北方/西方の地域、から来た瓜)と当てることが多いですが、語源的には黄瓜(黄色い瓜)のようです。「きゅうり」の文献情報を以下に示します。

・「黄瓜」の記載――『正倉院文書』(奈良時代)
 →奈良時代には既に栽培か
・和訓として「キウリ」の記載――『和名抄』(平安時代)
 →江戸時代までは[キウリ]と発音
・「日本人は黄色く熟したキュウリを食べていた」
       ――『日欧風習対照覚書』(1585年)
・「漢の張騫が西域(胡)に派遣された時に中国にもたらされた」
                   ――『和漢三才図絵』(1712年)

cucumber を用いた表現には次のようなフレーズがあります。
as cool as a cucumber とても冷静で
 頭韻を踏んだ直喩(simile)です。昔、温度計が発明された時、キュウリの中身が外気より6~7℃低いことがわかったことから生まれた表現のようです。

つづりつながりでは次の単語もありました。
cumber 妨害・邪魔/~を妨害する・苦しめる
cumberer 邪魔者
cumbersome わずらわしい・面倒な (= troublesome)

 さて、最近、ペプシのキュウリ味「ペプシアイスキューカンバー」が出たそうです。ひょっとして上述の「as cool as a cucumber」からの発案でしょうか?飲むのに少し勇気が要りそうですが、果たして味はいかに!?
 

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