アクセントの法則

2008年12月 7日 (日)

Career in Korea

実ビジのテキスト(08.11月号)の巻頭で杉田先生が述べられていたように、英語は綴りが同じでも発音が一通りに決まらない言語の1つですが、経験上、強勢の置かれた第一音節の「子音字+a」は概ね[子音字+ae]と発音されると思います。しかし、強勢がない場合にはこの限りではありません。例えばcareer。クリスさん(実ビジ)の発音を聞くと、日本語の「キャリア」とはだいぶ違う印象を受けます。出だしの音が完全に「ク」に聞こえ、全体で「リァ」と聞こえます。まるでKorea(韓国)みたい・・・と思い、ためしに辞書を引いて両者の発音記号を確認したところ何とびっくり!

「carrer」と「Korea」は同音異義語(homonym)でした

*career in Korea 韓国における職 *[kэri'э]

厳密に言うと韓国はSouth Korea(通称)で、Koreaは「朝鮮」ですが、これは「高麗」がなまってできた語(新英和中辞典第5版/研究社)だそうで、その発音がcareerと偶然同じになったという神秘!これは意外な発見でした。早速、Repeat型のrhymeにストックしました。

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2008年3月14日 (金)

Ubiquitous Maria

今回は、日本人には違和感のある、英語のMariaの発音:[mərí:ə](*第2音節にアクセント)について、さまざまな言語で頻繁に歌われるMaria(ある意味、ubiquitous Maria・笑)を取り上げることで、音楽的に考察をしてみたいと思います。

<動機>「やさビジ」の録音で、杉田先生がアシスタントのMaria del Vecchio さんに“Now, María, ...”と呼びかけている発音を聞いてはっとしたから。

<結果と考察>とくにMariaMaからriにかけての音型とリズムについて注目しました。

クラシック音楽におけるMaria~ラテン語編
(a)モーツァルト Ave Verum Corpus KV.618

Morzartmaria 

四声の賛美歌。冒頭(8小節目)にMariaが出てきます。
・音の長さ Mari
・Ma→ri 上昇音型(主旋律)

(b)シューベルト Ave Maria D.839, Op.52-6
・音の長さ Mari
・Ma→ri 上昇音型

クラシック音楽におけるMaria~ドイツ語編
 ブラームス 「2つの歌」より「聖なる子守唄」 Op.91-2

Brahms

アルト(独唱)の歌曲。冒頭のイントロ部(ビオラorチェロ)のMariaでは珍しく下降しています(注:楽譜はヘ音記号)。
・音の長さ Mari
・Ma→ri 下降音型

現代音楽におけるMaria~スペイン語編
 David Bisbal 「Ave Maria」 
2007年度の「スペイン語講座入門編」のテーマ曲。
・音の長さ Mari
・Ma→ri 上昇音型

①~③から、ラテン語、ドイツ語、スペイン語の歌曲では、以下のことが言えそうです。
Mariaのメロディとリズムについては、
・音の長さは必ずMa≦riとなる
・「音の長さ:Ma<ri」か、「Ma→riが上昇音型」のどちらかを満たす

現代音楽におけるMaria~日本語編
(a) T-BOLAN マリア
(b) 浜田省吾 「我が心のマリア」(注1)

 3つの音節からなる日本語の単語で真ん中の音節に強勢が置かれるのは極めて稀で、それは日本人の歌曲の作曲にも無意識に現れています。例えば、(a)も(b)も「マリア」の「マ」に強勢が置かれています。とくに(b)の歌詞は全て英語ですが、冒頭の「Maria」の旋律は上記①~③とは対照的に、音の長さ:Ma>riで、かつMa→ri が下降音階となっています。

(注1)(超のつく)余談ですが、この曲は私が結婚式の入場時に使わせていただいた思い出の曲です。

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2008年1月27日 (日)

meter

以前、barometer を取り上げましたが、今回は「meter」を含む複合語について、単語のアップデートをし、さらにアクセントの問題ももう少し考察してみたいと思います。
meter」はアルクの語源辞典によると、ギリシア語のmetron(=measure)由来の語で、①何かを計測する機器(-meter)、②(計測した結果の)長さの単位(meter)を意味します。ちなみに、「ネイティブの「造語力」を身につける!」という本には「ラテン・ギリシア語由来」という記述がありましたが、ラテン語の直系ならmetorとなっていてもよさそうな気もしました。

計測機器系-meter の直前の音節にアクセント
 日本語の感覚とかなりズレたものもあるので要注意です。

altimeter 高度計
anemometer 風力計
audiometer 聴力計
barometer 気圧計/バロメーター
chronometer (高精度)腕時計
hygrometer 湿度計
manometer 圧力計(blood pressure ~で血圧計)
micrómeter 測微装置/精密測定器(②の項も参照)
odometer オードメーター・走行距離計
parameter パラメータ(ー)、変数
pedometer 歩数計
perimeter 視野計/(飛行場・基地の)周辺
seismometer 地震計(地震のサイズもう見た?)
speedometer 速度計
 *発音が気になる方は→こちら(衝撃です!)
thermometer 温度計
tachometer タコメーター(回転速度計)
telemeter 遠隔計器

単位系第一音節にアクセントの傾向
 おそらく初めは接頭辞のアクセントが優先されていたものが、①の語形成の流行とともにアクセントパターンが①へ移行する現象も出てきたのではないかと考えられます(ex. kilometer)。 

céntimeter センチメートル(cm)
kilómeter キロメートル(km) *例外的なパターン
 *[ki]を強める発音もあり(byクリスさん)。
míllimeter ミリメートル(mm)
mícrometer マイクロメートル(μm) *0.001mm
nánometer ナノメートル(nm) *0.001μm

今回とくにおもしろいと思ったのは、micrometer です。これを単位として使う場合、辞書にはたいてい①のパターン(micrómeter)が載っていますが、先日仕事でイギリス人(男性,30歳前後)のプレゼンを聞いていたら、やはりmícrometer と発音していました。もっとも、彼はほとんどの場合、同じ意味でmicron [maikran] を連発していました。やはり口語ではmicrometerは長すぎるようで、その辺りは日本語の「ミクロン」と同じだと思いました(発音は違います)。
また、-metryは測定法の意味の接尾辞で不可算名詞を作ります。この関係は、-graph(記録のための機器)と-graphy(記録法)と同じです。

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2007年11月 9日 (金)

dis

接頭辞「dis」は、品詞に関わらず強アクセントは置かれない傾向があるようです。

例外: díscordn. 不協和音)
    discount(割引)→①と③の両方のパターンあり

 このブログによくお立ち寄りの方はお気づきかと思いますが、英単語に対する私のスタンスは「音」と「語源」が両軸です。「音」に関しては、ブログ中でも RhymePUNアクセントの法則 などに反映されています。「語源」に関しては、ブログの語源シリーズ以外にも「語源マトリックス」というものを作成中です。それによると、dis で始まる動詞には次の2つのパターンがあります。

分解系のdis(=apart, away)
 例:disrupt(ビリビリに破る→分裂させる)
   discharge(責務を粉々にしてなくす→責務を果たす)
   discuss(バラバラに砕く→討論する)
否定のdis(=not)
 例:disagree(一致しない、不賛成である)
   disclose(閉じ込めない→暴露する)

 「語源マトリックス」はいずれ何らかの形で皆さんに公開したいと考えています。

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2007年11月 8日 (木)

名詞形と動詞形

今や共通テストからも姿を消した?発音問題。私は「弱アクセント」の発音にはあまりこだわりませんが、第一アクセントのある音節の発音は外せないポイントだと思っています。ここで、「名詞形動詞形」がお互いに似た単語では発音パターンがどう変わるかを見てみます。

アクセントだけが後ろに移動するパターン名前動後
 例:addictディクトゥ)→addict(アディトゥ)、他多数

アクセント不変で語尾が濁るパターン名ス動ズ
 device(ディヴァイス)→devise(ディヴァイズ) 
 例:adviceadvise, proof → prove

発音もアクセントも全く変わらないパターン
 display
(ディスプイ)→display(ディスプイ)

 ③の例で気づいたのですが、接頭辞「dis」は、品詞に関わらず強アクセントは置かれない傾向があるようです。→詳細はこちら

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2007年11月 3日 (土)

Mandarin Way

ビジ英L3の(1)(07-10月号, p.75)で気になる単語がいくつか出てきました。

Mandarin 標準中国語(北京官話)
 これを聞いて最初に連想するのは「mandarin orange」で、いわゆる日本の(温州)ミカンに相当します。この、mandarin は普通名詞化しているためMが小文字で(ex. romaine lettuce)、アクセントは第1音節です。ちなみに、tangerine 単独では日本語の「オレンジ」で、こちらは最後にアクセント。これらのアクセントの位置に関して、個人的な経験則を以下に記します。

「子音+in」の語尾には強アクセントがない(2音節以上)
例: áspirin(アスピリン), sávarin(サヴァラン)etc.
例外:akín や仏語由来の単語

強勢なしの語尾+「e」→その語尾に強勢移動(母音も変化)
例:
gérman(同父母から生まれた)→germáne(密接に関係した)
húman(人間)→humáne(人間味のある)
ócal(地元の人/普通列車/支部etc.)→locále(現場/場面)
móral(モラル、教訓)→ morále(士気)
rátional(理性的な/合理的な)→ rationále(論拠・原理)
támbourin(タンブラン*)→ tambouríne(タンバリン)
 *南仏地方の細長い太鼓/その踊り・舞曲
例外:専門用語
sílicon [si'likn] シリコン,ケイ素
sílicone [si'likoun] 有機ケイ素化合物,シリコーン(<silico-ketone)
 *発音は変わりますがアクセントはそのまま。

A little language goes a long way. 少しの言葉がずいぶん役立つ
 気になるのはgo~way の関係で、~way は副詞句と考えています(名詞の副詞的目的格)。このパターンはいろんなバリエーションがあります。

go all the way 行くところまで行く
go the way of the dinosaurs すたれる・滅亡の道をたどる
go one's way 自分の思い通りになる/いく
A little goes a long way. 少しがずいぶん役立つ

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2007年8月22日 (水)

アクセントの移動

 以前に、「色+名詞」のアクセントパターンについて書いたのですが、調べていると同じフレーズでも辞書によってアクセントの位置が違うことがありました。具体的な例としては、「色」と「名詞」が一体化していない場合では、同じフレーズでも、強勢が「色」だけに置かれるものと、「色」と「名詞」の両方に置かれるものがありました。そこで、そのときは、いくつかの辞書をあたって見出された以下の規則性について言及しました。

強勢の関係を式で表すと、
●一般に、色≧名詞
●固有名詞化 or 1つの品詞に転化している場合は、色>名詞
 *
品詞として両者が独立している場合で、色>名詞となる例は限られている。

 ところで、最近、アクセントに関する新しい知見を得ました。すなわち、新英和中辞典第5版(研究社)によると、後方に第1アクセント(primary accent)を持つ単語Aの直後に、第1アクセントを第1音節(first syllable)に持つ単語Bが続くと、Aの中で第1アクセントがその前方の第2アクセント(secondary accent)への移動が起こる場合があるという記載がありました(p.1962)。ちなみにこの辞書では、このアクセント移動が起こりうる単語には、発音記号の最後に、上付きの「←」の表示が施されています。

(例)Japanése (オリジナル)→ Jápanese bóys (アクセント移動型)

 この現象はやはり発音のしやすさが優先されるために起こるものと考えられますが、もしかしたら上述した「辞書によるアクセントのばらつき」も、似たようなことが不規則に起こっているからなのかもしれません。

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2007年7月18日 (水)

barometer

この記事の更新版はこちら

 「健康のバロメーター」のように、今では一般的な日本語としても使われる barometer は元々「気圧計」の意味でした。また、~meter で終わる単語は -meter の直前の音節にアクセントがあるという傾向が強いようです。これは日本語の感覚とは少し違ったイントネーションです。

altimeter 高度計
anemometer 風力計
audiometer 聴力計
barometer 気圧計/バロメーター
hygrometer 湿度計
kilometer キロメートル(km)
 *[ki]を強める発音もあり。以下の単位系は最初にアクセント。
 ・centimeter センチメートル
 ・nanometer ナノメートル
manometer 圧力計(blood pressure ~で血圧計)
odometer オードメータ・走行距離計
parameter パラメータ(ー)、変数
pedometer 歩数計(以前、ビジ英の高橋修三さんの企画で出てきました)
perimeter (飛行場・基地の)周辺
seismometer 地震計(サイズミター)
speedometer 速度計
 *この発音は衝撃的!気になる方は→こちら
thermometer 温度計
tachometer タコメータ・回転速度計
telemeter 遠隔計器

◆「地震の」の意味の形容詞 seismic は「サイズミック」と発音する要注意の単語ですね。cosmic(宇宙の)のコズミックに少し似ています。

似たアクセントパターンとしては以下のような単語があります。
distributor 配布者/販売業者
 *「tri」にアクセント。気になる方は→こちら
astronomer 天文学者
 *「tro」にアクセント。astronomy(天文学)も同様。

さて、ビジネスシーンでは、日本語を話す時になぜか横文字を使うのが非常に好きな方がいます。例えば、「この場合のプライオリティはね・・・」、「現地のディストゥリビューターが・・・」という具合。でも残念ながら、この「distributor」を正確に発音している日本人にはあまり出会ったことがありません(杉田先生は当然きれいに発音されていました)。

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2007年7月 1日 (日)

「色+名詞」型のセットフレーズ(強勢の問題)

先日の大杉先生のものしり講座で、「色を表す形容詞+名詞」のパターンは、それが特別な意味を持つ決まりフレーズになる場合には、通常、「色」の方を強く発音すると説明されていました(greenhouse, the White House, etc.)。
でも、ふと、2005-2006年度ものしり語法塾で松本茂先生が、white elephant (無用の長物)のélephant をしっかり発音していたのを思い出しました。よく調べてみると、「色+名詞」のセットフレーズの発音パターンは辞書によってかなりばらつきがあるようですが、基本的には以下のような傾向がつかむことができました。

 強勢の関係を式で表すと、
●一般に、色≧名詞
●固有名詞化 or 1つの品詞に転化している場合は、色>名詞
 *
品詞として両者が独立している場合で、色>名詞となる例は限られている。

例として、これまでに「Color」のカテゴリーで取り上げた表現を中心に強勢パターンをまとめてみました。

ex.) 
blácklist ブラックリスト(に載せる)
bláckmail 脅迫(する)

blúeberry ブルーベリー
blúe cheese ブルーチーズ
blúe ríbbon 最高栄誉賞

gréen gíft 環境に配慮した贈り物
gréenhouse (まれにgréen houseと表記) 温室
gréen líght ゴーサイン
gréen-light ゴーサインを出す

réd cárd レッドカード(違反・退場の指示)
réd cárpet 丁重な扱い
rédeye(red-eye) 夜行便/安物のウイスキー
réd hérring 人の注意をそらすもの・デマ情報
réd tápe お役所仕事

pínk élephant(s) 酔っ払いの幻覚(しばしば複数形で)
pínkeye 流行性結膜炎・はやり目
pínk slíp (米口)解雇通知/自動車運転仮免許
pínk-slip (米口)vt. 解雇する

whíte bréad 面白味のない人・退屈な人
whíte élephant 無用の長物・やっかいもの
whíte hópe 大いに期待される人
・the Whíte House ホワイトハウス(米国大統領官邸)
whíte kníght 救世主/企業買収を救済する出資者
whíte líe 悪意のない嘘/社交辞令
whíte paper 白書(whíte páper とも)

yéllow cárd イエローカード(警告)

結論として、「色を表す形容詞+名詞」のセットフレーズの場合は、「色」にしっかり強勢を置いて発音しましょう、ということですね。

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2007年1月22日 (月)

3語からなる句動詞(2)

先月と今月のビジ英で「3語からなる句動詞」が結構出てきていました。

come [over / across] as ~ ~という印象を与える(ビジ英12月号、p.22)
 同じ回のVignette に2つも!Daily Quiz 3 ではappear to be で言い換え。クリスさんは、appear, be seen as, be understood as と説明していました。

own up to+(動)名詞 (罪などを)認める(ビジ英12月号、p.25、1(a))
 Daily Quiz 1 
 Acknowledge any error and update what was posted accordingly.
 誤りは何であれ認め、書き込み内容を適宜改訂することです。
Own up to any error and update what was sent accordingly. に書き換え。 
 look forward to -ing などと同様、to不定詞を続けないように注意しなければ!その他、acknowledge は、論文の最後の「Acknowledgement.(謝辞)」としておなじみなので「感謝する」がまず思い浮かんだのですが、第一義は「認める」。そしてその発音はエグレジと聞こえました。また、error はここでは文脈的に「考え違い」の意味なのでuncountable。
 動詞+up+to のパターンは他に「live / measure up to (要望・期待など)に応える」(ビジ英1月号、p.44)がありました。
 
walk out on (人) (人)のもとを去る、(人)を見捨てる(ビジ英1月号、p.48)
 日本語では「立ち去る」と言いますが、英語では「歩いて出ていく」→「見捨てる」。
 次の文に似ていると思いました。 
 Dr. Lee never gives up on a patient. (キーワードで英会話 '06.9月号、p.20)
 ドクター・リーは決して患者を見捨てない。
 どちらも「(対象と)関わり続ける状態」がon でうまく表されています。確か、番組中の説明では「(人)に際して」と訳語を当てていました。

録音した放送を聞き直してみると、いずれもやはり真ん中の副詞のところにイントネーションの山があります。副詞の存在感が伝わるように発音するとネイティブっぽく聞こえるかもしれません。

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