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2009年3月 8日 (日)

False Negative

ある一定のパターンのリスクに名前をつけて注意を喚起することがあります。例えば、「サンキュー事故」。車に乗り、対向車線が渋滞している道路で右折待ちをしている時、対向車に道を譲られたため「ありがとう」と合図しながら急いで右折したところ、その対向車の死角(対向車線の道端等)から出てきたバイク等と衝突する事故のことです。このような事故を一言で「サンキュー事故」と呼称することで運転者に注意を促すわけです。
 英語でも、誤解のリスクを低減するために、false negative(偽否定)と呼ばれる接頭辞があります。その代表は「in-」です。このin-は元々ラテン語の接頭辞(あるいは単に単語の一部)由来で「~の中に、~の上に」という意味などをもっていましたが、ずっと後になって英語ではなぜか「否定の接頭辞」としても使われるようになりました。このため、両者が混在する現代では誤解が生じるわけです。
 日本語で考えると、例えば、「幸運」の対義語は「不運」ですが、「悪運」も間違いではありません。しかし、「悪運が強い」の悪運は「悪いことをする人の幸運」という意味で、「不運」とは別の言葉です。この場合の「悪」が偽否定といえます。
 ちなみに、「善心」の対義語は「悪心」と書いて「あくしん」と読みますが、悪心(おしん)と読めば「吐き気」を意味する別の言葉になります。

【false negativeの例
discharge (責務を)果たす(×chargeの否定=責務を課さない)
disseminate 普及させる(×seminare(L)の否定=苗を植えない)
dispart 分裂/分離する(させる)(×partの否定=1つにする)
dissoluble 溶解性の(×solubleの否定=不溶性の)
 *否定形はinsoluble 「不溶性の」
impart 分け与える/開示する(×partの否定=1つにする)
impassioned 情熱にあふれた(×passionの否定=冷静)
 *否定形はdispassionate 「冷静な」。
 
誤用だがimpassionateも「冷静な」として使われるケースあり(英辞郎)。
impeachable 告発すべき(×peach+ableの否定=密告すべきでない)
 cf. unimpeachableで「非の打ちどころのない」
indifferent 無関心の(×differentの否定=同じ)
infamous 悪名高い(×famousの否定=無名の)
inflammable 可燃性の(×flammableの否定=不燃性の)
 *否定形はnonflammable 「不燃性の」
ingenious 器用な・巧妙な(×geniusの否定=平凡な)
inhabitable 居住に適した(×habitableの否定=住めない)
irradiate (放射線を)照射する(×radiateの否定=(光/熱を)放射しない)

とくにinflammable を「不燃性の」と間違えると大変なことに!
 *in-とun-:明らかにラテン語起源ではない場合にはun-をつけることが多い(研究社英和大辞典1953)

参考:
<否定の接頭辞「in-」と語幹の結合規則>
の前→「im-」に変化(impossible等)
の前→「il-」、「ir-」にそれぞれ変化(irregular等)
つまり、mlr の場合 imm-、ill-、irr- と文字がダブります。

<注意したい否定の接頭辞>
interested ①興味がある、②私心のある の否定形はそれぞれ異なります。
uninterested 無関心な
disinterested 公平な

誤用だがdisinterestedも「無関心な」として使われるケースあり(英辞郎)。

unstudied (学んだのではなく)自然と身に備わった
 ex. unstudied charm 自然な魅力
 ⇔studied ①熟慮の上の②わざとらしい

 上記のunstudiedは②の否定形です。このように、もとの単語に「かくれネガティブ」的な意味がある場合には、その否定形が意外なプラスのイメージを持つので要注意です。

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コメント

dischargeに責任を果たす、なんて意味があったとは知りませんでした。(負債を)支払うという意味もあるようですから、そこから類推すると「責任から解放される」→「責任を果たす」と意味が変わっていったのでしょうかね。

一度生徒さんからdisappointのdisも「否定」のdisですか?と不思議がられたので、辞書を調べたことがあります。appoint(指名)の否定(dis)→「失望させる」という語源が出ていて、へぇ~と思いました。

false negativeの情報、TOEICのクラスで紹介させていただきます。


montoさん
「disappoint」は任命されなかったという失望だったんですね~ なるほどです。
dischargeについては少し前に考察したのでよろしかったらそちらもご参照下さい(本文中のdischargeにその記事をリンクさせました)。 
false negativeは、酒井玲子先生の『ネイティブの「造語力」を身につける!』(国際語学社)という本(in-のシリーズが数例記載)がきっかけで例を探すようになりました。最近、dis-のfalse negativeがあることに気づきました。

授業で紹介していただけるなんて恐縮&光栄です!
【やまちゅう@管理人】

投稿: monto(返信付) | 2009年3月10日 (火) 22時33分

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