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2009年2月28日 (土)

「as ~ as」構文の解釈

漫画「ドラゴン桜」の指導法のモデルとしても有名な竹岡先生の本、超人気講師のスーパー授業 竹岡式やり直し英語 (AERA Englishブックシリーズ)を最近購入しました。AERA Englishの連載記事が単行本化されたもので、これまで疑問を持たずに習ってきた文法について、まさに「目からウロコ」の解釈がいくつも含まれていました。今回はその中の1つ、「as ~ as」構文の先生の説明(同本 p.125)を咀嚼し、記事後半ではこれまで個人的にしっくりこなかった慣用表現の理解にも応用してみました。

 「A is as ~ as B」:A≧B,ただしAとBは小差

私はこれまで、ごく普通に「AはBと同じくらい~だ」と思っていました。ところがもしそうだとすると以下の文章が意味不明になります。

He knows as much as anyone in the world about Harry Potter.
彼はハリー・ポッターについて世界中の誰よりも詳しい。

この手の表現は最上級の言い換えとしておなじみですが、「世界中の誰と比べても同じ」では「一番」のニュアンスは全く伝わりません。正しくは、「世界中の誰と比べても同じかそれ以上」だから「一番」になるわけです。しかも、「その差は少し」で、「一番」が複数人の可能性も示唆している分、最上級よりも聞き手に控えめな印象を与える効果もあるのではないでしょうか。

また、「A is as ~ as B」:A≧Bの否定形は、「A is not as ~ as B」:A<Bなので、数学的にもきちっとつじつまが合っています。もし、「A is as ~ as B」A=Bなら、「A is not as ~ as B」A<BあるいはA>B となりおかしなことになってしまいます。

以上の解釈を踏まえると、個人的に非常に理解しづらかった次の慣用表現の本質が見えてきました。

may [might] as well do A as do B 
 まずこの表現は前提が大切です。その前提とは「AをするのもBもするのも大差なくどっちもネガティブであること」です。「well」は動詞の直前に置かれて可能性(may/might)を強調する副詞です。つまり、どっちもやりたくないけどあえて言うなら実行の可能性は「Aをすること」≧「Bをすること」→「Aをする方がBをするよりまだマシ」となります。俗に言う「究極の選択」状態ですね。
 cf. Might as well. その方がまだマシ。

Your guess is as good as mine. 
 これは、何かを聞かれて答えがわからない時に、「あなた(=質問者)がわからなければ私もわかりません」という意味で使う表現です。ただ、英文を直訳しても何かピンときません。「as~as」は反語的に否定形で訳出することがありますがこの場合はあてはまらなそうです。そこで、文の意味を数式で表現すると、

 推測の確かさyour guess≧my guess
で、「私の推測はあなたの推測以下」となります。つまり、「あなたが私以上に知っているということはあっても、私があなたより知っているということはない」→「あなたがわからない(前提)なら、私もわからない」ということです。単純に、My guess is as bad as yours.と言いたいところですが、your guess をbadの程度の対象にするのは失礼なので、同じ意味になるように主語を入れ替え、bad→good としたのではないでしょうか。
 
*補足:「as~as」構文において~に入る形容詞は一種の「単位」を表し、goodとbadならgoodが単位となります。あえて「as bad as」とすると、そこに特別の意味(強調・皮肉など)を込めてしまうことになるので、ここはやはり「as good as」が選択されるのが自然ではないでしょうか。

 「as ~ as any ~」や「Your guess is as good as mine.」も、こうして考えてみると、思いやりのある表現なのかもと思いました。竹岡先生に感謝です。

cf. 「as ~ as」の関連記事
 →montoさんのブログ記事
 →Simile(直喩)

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コメント

やまちゅうさん
さすがに、深い分析で唸りました!すごい!A is as...as BがA≧Bというのは、私が紹介したミントン氏の意見と食い違う気もしますが、やまちゅうさんのas much as anyone in the world などAが大きいと考えたほうが辻褄があいますね。

もう一度、ミントン氏の解析とこのブログとを照らし合わせて考えてみたいと思います。

ご無沙汰していましたが、これから、ちょくちょく寄らせてもらいます。この手の論理的解説私大好きなので!

投稿: monto | 2009年3月 7日 (土) 11時34分

montoさん
3/6朝の田中茂範先生のTV番組(新感覚☆わかる使える英文法)はちょうど比較・同等級の回でした。その中で田中先生は、Nancy has as much money as Jack.を 『ナンシーはジャックと同じくらいお金を持っている。ただし全く同じではなくナンシーの方がたくさん持っている可能性もある。』と軽く説明されていました。

確かに、「A is as...as B」:A≧B(ただし小差)における≧の>の部分は通常、訳出には反映されませんよね。しかし、montoさんのブログ記事を読んではっとしました。「A is as...as B」のBが...の自明の対象! そういう対象Bと同等比較をするからには、話者が発言にかなり自信を持っているはずです。つまり、A≧Bの>は「事実上の差異」よりも「話者の確信の強さ」を表している、ともいえます。

ブログ、早速リンクさせていただきました。ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: やまちゅう | 2009年3月 8日 (日) 00時58分

そうかあ、上記やまちゅうさんのコメントを読んで、ミントン氏との整合性を確認納得しました。ありがとうございます。m(_ _)m


montoさん
montoさんに納得していただけたなら安心です。こちらこそありがとうございます。
【やまちゅう@管理人】

投稿: monto(返信付) | 2009年3月 9日 (月) 22時02分

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