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2009年1月

2009年1月29日 (木)

タンタル(tantalum)

タンタル(原子番号73、元素記号Ta)は、A. G. Ekeberg(Swedish Chemist, 1767-1813)がニオブ(Nb)との混合物として発見(1802年)、後にH. Roseが単体分離(1846年)した元素です。現代の産業において重要な金属の1つで、例えば携帯電話中のコンデンサや人工骨や歯のインプラントの材料になります。「タンタル」の名称の由来については以下の2つの説があります。

①じらされ説
Ekebergがタンタルの発見に至るまでに非常にじらされたことから。当時の話:“This element (= tantalum) was hard to locate; its tracking down was a tantalizing task. Hence he named it tantalum.”

②耐酸性説
タンタルが耐酸性・耐食性に優れている(例えば王水に不溶である)ところから。ギリシャ神話で、ゼウスの子タンタロス(Tantalus)が、父の秘密をもらした罰として地獄で飢えと渇きに耐えたことにちなんでいる。これは英語の動詞「tantalize」の語源でもある。

個人的には①が先で②はあとづけかなという気がしていますが、いずれにしてもタンタル(tantalum)がtantalizeやTantalusと関連のある名称だということは興味深い事実です。

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2009年1月17日 (土)

Theater DUO <第3.5幕>

約1年ぶり(!)の更新となるTheater DUOは、『DUO 3.0』に散りばめられた560本の例文をつなぎ合わせ、「隠された」ストーリーを紡ぎ出していくシリーズです。今や年始限定の企画になりつつある気がしますが、未使用の文はまだまだたくさん残っています。

ここで登場人物をあらためて紹介します。

Bob:主人公。Jenniferと恋愛結婚後、まもなく破局。現在就活中。
Nick:やり手の実業家。仲間とIT企業「Duos」を興す。
Jennifer:Bobと離婚後、Nickと婚約。悪女との噂も。
Jane:Bobの親友でよき相談相手。「Duos」の正社員。
Lisa:Bobの友人でNickの元妻。現在行方不明。

さて、今回は第3幕第4幕の間のお話でJaneに焦点が当たります。第3.5幕だけに三行半(みくだりはん)の文字がちらつきます(笑)が果たして・・・。なお、従来通り、DUO中の文章No.(ページNo.ではありません)を各文末の( )内に示しました。

BobはJenniferと離婚後、それまで勤めていた会社も辞め、再就職先を探す毎日。一方のJenniferはBobと別れた後、契約社員としてNick達が経営する「Duos」に派遣が決まりました。そこにはBobの親友Janeも勤めていますが、Janeは会社にかなり不満があり爆発寸前です。
さて、Jenniferが「Duos」に来て1ヶ月ほど経ったある日の昼休み。Janeは同僚のKenに話しかけました・・・

Jane: Sorry to interrupt your meal but I'd like a word with you in private.
Ken: Can I get back to you later? (309)

ジェーン:食事の邪魔をして悪いんだけど、ちょっと内密に話がしたいの。
ケン:後で君のところに行くよ。

Janeは会社での日頃の不満をKenに吐き出し始めました。どうやら上司としてのNickの態度がJenniferとJaneとでだいぶ違うようです。Janeの場合はいつも・・・

Jane: Nick, I want you to look this over before I turn it in.
Nick: Sorry, but I have my hands full right now. (161)

ジェーン:ニック、これを提出する前にざっと目を通していただきたいんですが。
ニック:ごめん。今、手が離せないんだ。

ところが、Jenniferの場合は・・・

Jennifer: Nick, I'm counting on you.
Nick: OK, I'll see to it.
Jennifer: Thanks, I appreciate it.
Nick: Don't mention it. (285)

ジェニファー:頼りにしてるわ、ニック。
ニック:大丈夫、きちんとやっておきますよ。
ジェニファー:ありがとう、感謝するわ。
ニック:いいんですよ。

JaneとKenの会話が続きます。

Ken: Apparently, Nick wasn't willing to take on the task because it would just add to his burdens. (282)
Jane: Nick looks down on anyone who comes from a rural area. (503) I hate him! He behaves as if he were somebody. (151) I'm fed up with just shuffling papers and pouring coffee. I've made up my mind to quit! (377) 

ケン:どうやら、ニックは自分の負担が増えるからその仕事を引き受けたがらなかったようだね。
ジェーン:ニックは地方出身なら誰だろうと見下すのよ。彼、大っ嫌い!まるで自分が大物であるかのように振る舞うし。書類整理とかお茶くみなんかももううんざり。会社を辞めることに決めたわ!

ケンは心の中で思いました。

Female clerks may well complain about their routines, which are not challenging at all.... (379)

女性職員が自分達の日常業務に不満を言うのももっともだ、全くやりがいのない仕事だから・・・

Janeは会社に三行半を叩きつけ、ついに退社。Jenniferは・・・

―――――――――― Theater DUO <第4幕>へ続く・・・

ちょっと気になったのは後半のKenのコメント、Apparently~のくだりです。

apparently どうやら・見たところ~
 形容詞 apparentは①はっきりとした、②外見上の、見たところの、という意味ですが、apparentlyになるとほとんど②の意味の副詞として使われ、①の意味ではまれだそうです(アルク・英辞郎)。「明らかに」を意味する副詞といえば obviouslyがありますが、元の形容詞obviousには「当たり前」・「分かりきった」といったニュアンスが含まれています。

be willing to do (内心)あまりやりたくない
 Kenの台詞では否定文でしたが、最近の傾向としては、肯定文で、あんまりやりたくないといった反語的なニュアンスを含むそうです(入門ビジネス英語)。

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2009年1月16日 (金)

Spoonerism(頭音転換)

「実ビジ」1月号テキストの「はじめに」には、「通常はあまり使わないような長い単語を、意味も不確かなままに使いこっけいな効果を生んでしまう」ような言い間違い=malaproprismが紹介されていました。直訳すると「不適切法(mal+apropr+ism)」でしょうか。反対に、(聞き手側の)聞き違いはmondegreen(実ビジL7(3)でクリスさんの解説あり)と言いました。

さて、言い間違いといえば、二つ(以上)の単語の先頭の音を故意に入れ違いにすること(頭音転換)、またはそういう言い間違い(スプーナー誤法)のことをspoonerismと言うそうです。そういう言い間違いを頻繁にすることで有名だった英国のスプーナー牧師(W. A. Spooner, 1844-1930)の名前が一般名詞化したものだそうです(アルク・英辞郎)。洋画などで英語でしか通じないジョークを訳す際、この頭音転換が日本語で使われるのを見たことがあります。そのあたりはきっと翻訳者の腕(センス)の見せ所なんでしょうね。

最近見かけた例:
Herlock Sholmès エルロック・ショルメ
 *「怪盗紳士ルパン」に登場する、シャーロック・ホームズ(Shorlock Holmes)を想定した探偵キャラ。

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2009年1月15日 (木)

パイプ

昨日「実ビジ」に登場したconduit(導管/パイプ役)は知りませんでした。[kndwit, -djuit, kndit, -djuit]など、いくつか発音パターンがあるようですが、放送では一番目のように聴こえました。ということでpunを一句。

 I can do it as a conduit.
 私はパイプ役としてそれができます。

導管と聞くと「duct」が真っ先に浮かびますが、ductは接頭辞をつけてさまざまな動詞を作る語幹としても使われていますね。でも、conduitの「パイプ役」のように比喩的な使い方はしないようです。一方、pipeline(パイプライン)は「パイプ役、情報ルート」も意味します。とくに、イディオム的には次のような表現をよく見かけます。

 The product X is in the pipeline.
 製品Xが開発中です(まもなく市場に出ます)。

最近は「開発パイプライン」のように日本語にもなっていますね。

その他
pipe down 黙る/静かになる *作業終了の笛(pipe)が吹かれて甲板の艦員が下の船室に戻ると、甲板が静かになるところから(イデ由No.560)。

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2009年1月13日 (火)

実ビジL7の復習

先週の「実践ビジネス英語(L7)」からの抽出です。

rekindle 再燃させる
kindle a candle キャンドルに火を灯す→頭脚両韻型

grim 厳格な・残忍な
grim reminder つらい経験を思い出させるもの→しりとり型
grim Grimm 手厳しいグリム(グリム童話の編者)→反復型

grim reminderはそのまま登場していましたが、珍しい「しりとり型」。苗字のGrimmの方はクリスさんが指摘してました。昔、似たような発想で、stern Stern 厳格な(アイザック・)スターン(=Isaac Stern, U.S. violinist, 1920-2001)や、callous Callas 冷淡な(マリア・)カラス(=Maria Callas, 1923-1977)を作りました。形容詞がネガティブ系ばかりなのが残念ですが、これらはいずれも同音異義語(homonym)の組み合わせです。

最後に、昨夜の「入門ビジネス英語」からふと思いついたおふざけです。

You should not depend on a heuristics as a rule of thumb.
経験から言って、経験則に頼るべきではない。

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2009年1月12日 (月)

ギリシア/ラテン語由来の色

かなり昔に発見されたカラフルな化合物にはしばしばギリシア語またはラテン語でその色を意味する接頭辞がついています。ちょっとマニアックかもしれませんが、主だった例を挙げてみます。---(参考:現代化学2008年11月号,p.47)

albo- / argenti- / leuko-

amauro- / atri- / cani- / cinereo- / glauco- / polio-

melano- / nigri-

coccino- / eo- / erythto- / flammeo- / rhodo- / roseo- / rossi- / rubri- / rufi- / rutuli-

aureo- / chryso- / cirrho- / flavo- / fulvi-

fusci- / luteo- / ochreo- / xantho-

chloro- / prasini- / viridi-

ceruleo- / cyano- / iodo- / violaceo-

porphyro- / puniceo- / purpureo-

興味深いことに、今回挙げた例では、続く語幹との接続は必ず「o」か「i」を介しています(40個のうち「o」が28個、「i」が12個)。これらのうち個人的に気になった接頭辞は・・・

leuko- [lú:k(ou)-, -k()-/ljú:-]→leukocyte(白血球)。leuco~とも。

viridi- →絵の具のviridian(ビリジアン)は深い青緑色。
       (絵の具に「緑色」がないのはなぜでしょうか?)

chloro- chlorophyll(葉緑素)。染料にも使用。

argenti- Argentina(アルゼンチン)は「白」に間接的に関与。
→独立当時の名称は「リオ・デ・ラ・プラタ連合州」
 *Río de la Plata(スペイン語)=の川
→銀をラテン語のArgentumに変換(スペイン色を払拭するため)
→地名表現のため女性名詞化してArgentina 
 つまりラテン語で「白い金属」が銀だったわけです(-um/-iumは金属を意味する接尾辞:例外はhelium)。ちなみに「銀」の元素記号はラテン名に基づき「Ag」。cf. argent 銀(の)

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2009年1月 4日 (日)

Redundancy(重言表現)

pleonasm 冗語(法)
同義語・類語の反復による強調表現、またはその手法。古来より聖書や賛美歌で使われ、現代でもイディオムや専門用語によく見られます。

aches and pains うずきや痛み
advice and counsel 助言と忠告
advice and guidance 助言と指導
agreed to and accepted 受諾される
 
anything and everything 何かも全部
books and records 帳簿類
each and every 一人ひとりの
friends and acquaintances 一周囲の人々
hard and fast 厳重な・絶対動かせない
 *文字通り「激しく速く」の意味のときもある
huff and puff 憤慨して話す・息を切らす
 
*huffもpuffも「ふくれる=怒る」
HIV virus エイズウイルス
 *HIV=human immunodeficiency virus
It ain’t over till it’s over. (本当に)終わるまで終わりじゃない。
pins and needles (脚などが)しびれてピリピリする感覚。
 *on pins and needles しびれて/(不安で)やきもきして
long and lax (手紙や演説が)長くて要領を得ない
rules and regulations 規則
Sahara Desert (=Deserts Desert) サハラ砂漠
terms and conditions 契約条件
(last) will and testament 遺言書

とくに、HIV virus、ATM machine、LAN networkなどのtautologyは、
RAS syndrome(=Redundant Acronym Syndrome syndrome)と呼ばれています(注:厳密に言うと、HIV、ATMはアルファベットをそのまま読むのでacronymではなくinitialismです)。
cf. 名は体を表す

ここで、「pleonasm」と「tautology」の関係は以下のようになると思います。
pleonasm=intentional tautology
tautology=accidental pleonasm

reduplication 音の重複
単純な音の繰り返しを含む表現。親語(parentese,親が幼児に話しかける時の言葉)などによく見られます。例は数限りなくありますが、もし、音の重複が語頭や語尾にあればrhymeになります。

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2009年1月 2日 (金)

縁起物

あけましておめでとうございます。

諸事情があり昨年はなかなか更新ができませんでしたが、今年も「実ビジ」を中心に、ブログ記事を少しカジュアルで短めにしながら地道に続けていきたいと思います。

突然ですが、長いことで有名な単語(ドイツ語)に次のようなものがあります。
Donaudampfschiffahrtsgesellschaftskapitän
ドナウ川蒸気船会社船長

さらにこれに続けて以下のような例も。Donaudampfschiffahrtsgesellschaftskapitänskajütenhund
ドナウ川蒸気船会社船長室の犬

ドイツ語の場合、上のように単語と単語を「s」あるいは「n」でつなげていくのはごく自然ですが、英語では「o」(直前に母音が重なる時は省略)で1回つなげる程度ですね。

長いものは縁起物、ということでご紹介しました。
今年もよろしくお願いいたします。

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